稲川会

 ヤクザ組織のビッグ3と言えば、山口組住吉会、稲川会の3団体です。ビッグ3の中で構成員の数が少ないのが稲川会です。「平成25年版 警察白書」では、稲川会は約3700人の構成員を抱えています。神奈川県の川崎市、東京都の渋谷、神奈川県や千葉県の主要都市、東北にある福島県郡山市、北海道の札幌市、中部地方岐阜県等に有力2次団体が存在しております。ビッグ3と呼ばれる広域ヤクザ組織は、各地方都市にある裏の世界を掌握する2次団体達によって構成されているのが実態です。稲川会は、住吉会と並び、東日本主要都市の裏の世界に多大なる影響力を与えています。

*今回は記事を作成する際、『実話時代』2014年8月号、『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、洋泉社)、『洋泉社MOOK・勃発!関東ヤクザ戦争』(有限会社創雄社『実話時代』田中博昭編、2002年、洋泉社)の情報を参照させて頂きました

 

  1949年、現在の稲川会につながる稲川興業が稲川聖城によって静岡県熱海市で設立されます。1963年には錦政会に組織名称を変更します。その後、「第一次頂上作戦」と呼ばれる警察当局のヤクザ組織に対する取り締まり強化により、錦政会は解散します。しかし1972年、稲川会という組織名にて、組織を復活させます。稲川興業を起こしてから、これまで組織を率いてきた稲川聖城が、この時稲川会の初代会長に就任します。稲川会と住吉会の違いの1つとして、山口組との親密度があります。ヤクザ社会では、儀礼的な関係で組織の長もしくは幹部同士が結びつくことで、互いの組織を「親戚団体」と呼び合い、組織間の結び付きを強化することがあります。稲川会を復活させた1972年に、山口組と稲川会は幹部同士に儀礼的な関係を作らせることで、互いを親戚団体と見なしました。この関係は現在も続いており、山口組と稲川会は公式的な同盟関係にあると言えます。一方、山口組住吉会は、互いを親戚団体としておらず、公式的に同盟関係はありません。

 

 1986年、二代目会長として石井隆匡が組織のトップ職である会長に就任します。その際、会長職から退いた稲川聖城は総裁に就任しました。その後、石井隆匡・二代目会長は病気の為、引退します。その後を引き継いだのが稲川聖城の実子である稲川裕紘で、1990年に三代目会長に就任します。稲川裕紘・三代目会長が2005年に亡くなった後、2006年に角田吉男が四代目会長に就任します。その翌年の2007年に稲川聖城総裁が亡くなります。2010年には角田吉男・四代目会長が亡くなります。その後を受けて五代目会長に就任したのが、現在の会長である清田次郎です。歴史を振り返れば、近年までの稲川会には、稲川聖城という個人の要素が強く関わっていました。稲川会はカリスマオーナー企業の様相を帯びていました。

 

 五代目会長・清田次郎体制では「創業家・稲川ファミリー」の影響力は見られません。稲川会における組織ナンバー2の役職は理事長です。他の組織であれば若頭に相当する地位です。稲川聖城・初代会長時代の理事長は、二代目会長になる石井隆匡が務めていました。稲川会の現在の理事長は内堀和也です。内堀和也は1次団体・稲川会の理事長であると同時に、2次団体のトップを務めています。内堀和也が率いる2次団体は、神奈川県川崎市を本拠地とする山川一家です。東京都に隣接する川崎市は人口約140万人の大都市です。さいたま市の約120万人、広島市の約110万人や仙台市の約100万人の人口よりも、多い人口を川崎市は抱えています。人口に比例して、裏の世界の利権は大きくなります。人口の多い都市を縄張りとする2次団体は潤います。内堀和也は山川一家の三代目総長で、先代の二代目総長は清田次郎です。つまり山川一家出身者が稲川会のトップとナンバー2の地位を独占しています。稲川会における山川一家の優位性を物語る人事体制となっています。

 

 稲川会で渉外委員長を務める國近哲也が率いる2次団体・三本杉一家は東京都渋谷を本拠地としています。「若者の街」と称されることが多い渋谷は、新宿歌舞伎町よりは裏の世界の利権は少ないものの、大都市に変わりありません。恵まれた縄張りを有している2次団体です。稲川会の中で一定の存在感がある2次団体と言えます。角田吉男・四代目会長の出身2次団体は七熊一家です。人口約60万人を抱える千葉県船橋市を本拠地としています。過去に会長職を出した組織なので、稲川会でも有力な2次団体と言えます。実際、現在七熊一家総長である吉原勝彦は、稲川会の総本部本部長を務めています。

  

 北海道札幌市に本拠地を持つ越路家一家は、独立組織として活動していた期間を経て、1985年に稲川会に加入しました。また福島県郡山市に本拠地を持つ紘龍一家(旧組織名:寄居田中宗家連合真会)は、1989年に稲川会に加入しています。北海道と東北のこの2団体の例は、稲川会が広域化していく過程を物語っています。2次団体が東日本一帯に散らばっている為、広大な情報ネットワークが稲川会の中に構築されています。1地域だけを縄張りとする1次団体のヤクザ組織より、摂取できる情報量は桁外れに多いです。広大な情報ネットワークを活用して、稲川会は裏の世界の利権を増やすことができます。