アメリカやウルグアイで進む大麻合法化の動き

 現在日本の薬物問題で話題を占めているのが、危険ドラッグです。危険ドラッグ使用者が引き起こす事件・事故が度々マスコミで報じられています。一方外国では、従来の薬物根絶体制とは異なる方向に展開している大麻が注目を浴びています。漠然とした名称の危険ドラッグと異なり、大麻という名称は自身の薬物由来を的確に物語っています。衣服の繊維にも使用されている麻を原料として、麻の花穂を乾燥したものが大麻です。鎮痛作用を持っているので、昔から医療用として人々に使用されてきました。20世紀から陶酔目的での悪用が顕著になり、大麻は禁止薬物とされ、世界各国で生産・流通・使用行為は処罰の対象となりました。

*今回は記事を作成するにあたり、『週刊エコノミスト』2014年4月1日号「米コロラド州大麻解禁 関連ビジネス活況で、税収増」(金田善裕著)、「廃絶から使用容認へ 薬物規制は現実路線にシフト」(佐藤哲彦著)の情報を参照させて頂きました。

 長らく違法領域に留まっていた大麻でしたが、変化が訪れます。1996年にアメリカのカリフォルニア州で医療用大麻が合法化されます。現在アメリカの20州と首都特別区が医療用大麻を許しています。主にエイズ患者が鎮痛、食欲増進目的の為、医療用大麻を使用しています。痛みに苦しむ患者が麻薬組織から大麻を買わなくて済む措置であり、人道的配慮の色合いが濃い制度です。しかし今年からアメリカのコロラド州ワシントン州で嗜好用大麻が合法化されました。犯罪行為である大麻使用の主目的は陶酔に浸ることで、元々嗜好的要素が強いです。両州の嗜好用大麻合法化は、大麻を違法領域に留めてきた従来の施策と180度異なる側面を持っています。とはいえ両州の嗜好用大麻には規制の網が掛かっています。コロラド州の場合、嗜好用大麻を店で販売する為には、医療用大麻店として実績を積むことが条件になっています。その上で、州政府への開業申請が必要となります。

 両州が大麻使用を半ば合法化した背景には繁栄する麻薬組織の存在があります。アメリカの隣国メキシコにおける麻薬組織が巨大化していく度合いは、アメリカにおける麻薬問題の深刻さ度合いと比例しています。世界中の裏社会組織にとって、近代から現在まで麻薬ビジネスは主要な資金獲得源です。違法と指定される為、表社会において麻薬は供給量が減少します。一方裏社会では、最大の暴力的装置を持つ組織が麻薬の生産・流通を牛耳り、麻薬供給量のバルブを握ります。表社会に流す麻薬の量を唯一制限できる裏社会組織が、麻薬の価格決定権を得るのです。材料・生産コストに比べて、麻薬の売り値が高い理由は、不均衡な流通システムにあります。よって政府がとるべき対策は、まず裏社会組織への徹底的な取り締まりとなります。しかし悪の存在は雨後の筍で、大幅な改善を期待できません。

 供給元を叩くのでなく、流通システム自体を見直すことで、麻薬問題を解決する施策が両州の大麻合法化です。アメリカの場合、従来大麻の供給元はメキシコの麻薬組織だけと限られていました。メキシコ麻薬組織が大麻供給量のバルブを握って、大麻の価格決定権を持っていました。けれども合法化により、公的に許可された大麻農家も供給元になりました(今後両州において「大麻農家」は合法的職業となります)。供給元が増えることは、メキシコ麻薬組織が大麻の価格決定権を失ったことを意味します。流通システムは健全になり、人々は大麻を安く買えるようになります。メキシコ麻薬組織の衰退を期待できます。両州の財政を潤す効果も見込まれています。嗜好用大麻の税収や観光業などの関連ビジネスの盛り上がりから、両州の税収は多くなると推測されています。

 大麻合法化の流れはアメリカ以外でも起きています。アメリカより先立って、大麻使用を認めたのがオランダです。1970年代から公的機関の若者文化センターで大麻が販売され始めました。1980年代からはコーヒーショップという名の大麻販売所がオランダ各地に設立されました。しかしオランダの場合、大麻使用は認められていますが、「違法」という位置づけにされています。「非犯罪化」(犯罪ではないが、違法)と呼ばれる政策で、複雑な解釈になっています。南米の国ウルグアイは2013年に大麻を全面合法化しました。生産、流通、使用の全ての面で国が管理する形で合法化されたのです。佐藤哲彦氏の記事によれば「登録した個人は1ヵ月40グラムまで所持でき、年間6株まで栽培できる」とのことです。大麻は他の麻薬と異なり、「依存性が低い」「害が少ない」と形容されることが多いです。弊害の少ない麻薬なので、一部の地域で合法化された側面はあります。現在の日本は、賭博行為を建前として禁止している背景から、認められていなかったカジノを認めようとする動きが近年加速しています。この動きに乗じて大麻ビジネスも日本で合法化する動きが始まるかもしれません。

*現在の日本において大麻は非合法です。麻薬である以上、害は必ずあります。忘年会シーズンがはじまり、羽目を外す事が多くなってきます。大麻の誘惑が目の前にやってくるかもしれませんが、断固拒否しなければなりません。一度の大麻の使用が、裏社会との接点になります。大麻喫煙の動画を撮られて、脅迫の被害に遭う可能性もあります。くれぐれも注意したいです。