『21世紀の資本』

 海外で話題だった経済書『21世紀の資本』の日本語版が昨年12月発売され、昨今の出版不況の逆風をものともせず、好調な売上を見せています。幅広い時代・地域を網羅した膨大なデータを基に、資本主義が必然的に格差を作り出すことを実証しています。著者はフランスの経済学者、トマ・ピケティ。分厚い本が示すように、沢山の論点が描かれています。一つとして、資本主義社会下では経済成長率より資本収益率の方が高くなることがあります。噛み砕いて言えば、労働による所得の伸びより、投資による所得の伸びが高いということです。投資の優位性として、「移動の早さ」があります。

 不況業界から好況業界に移行して儲けを図る時、具体的な活動として、労働の移行は「転職」、投資の移行は「投資先の変更」となります。数か月要する「転職」に比べて、証券会社への指示だけで済む「投資先の変更」は1日以内で済みます。労働は「人間の体」、一方投資は「お金」によって実行されています。つまり業界間の移動という面では、「お金」の方が「人間の体」より優れているのです。加えて、現代の金融技術の発達が、投資の「移動性の早さ」を加速させています。

 問題は、労働行為の平等性に対して、投資行為の平等性が著しく低いことにあります。投資行為可能な人と不可能な人を分けるのは、持つお金の量です。お金がなければ、投資はできません。社会主義国の盟主・ソ連が1991年に崩壊してから、資本主義は「思想の濃度」を高めていきました。濃度の高い資本主義に対応できるように、先進国の政治・社会体制は形成されていきました。富を増やす為に、現在投資行為の価値は高まっています。投資できる層にとって、ますます豊かになる機会が増えています。逆に、投資できない層は限られた機会で勝負するしかありません。投資の優位性が続くと、経済格差の拡大に拍車が掛かかる懸念があるのです。