ベネズエラの外貨管理制度

 南米諸国の1つベネズエラが、原油価格の下落により、経済苦境に陥っています。ベネズエラ経済の脆弱性として、過度な石油依存があります。JETROの情報による2012年ベネズエラ経済の数字(アメリカドルで換算)が示しています。輸出額97340百万ドルの内、石油部門輸出額は93569百万ドルであり、輸出額比の石油部門割合は96%です。ベネズエラの輸出品目は石油に偏在していることが分かります。名目GDP総額は381286百万ドルであり、名目GDP比の輸出石油部門割合は25%です。ベネズエラは石油輸出で経済を賄っています。ベネズエラにとって残念なのは、ベネズエラの裁量のみで、原油価格が決定しないことです。中東諸国、ロシア、アメリカ等他の産油国の動向、原油輸入国の需要具合、世界情勢など、複合的な要因によって原油価格は決定されています。近年1バレル=100ドル付近で推移して原油価格が、現在は1バレル=50ドル付近まで下落しています。背景には、アメリカ国内におけるシェールオイルの増産、中国経済の成長鈍化があります。ベネズエラにとって、最大の輸出品を「半額」にして販売せざるをえない状況下です。石油輸出は多くの外貨をベネズエラにもたらしてきました。しかし裏返せば、外部環境によって経済の浮沈が決まることを意味します。ベネズエラ経済は危うい構造によって形成されています。

*今回記事を作成するにあたり、『週刊エコノミスト』2015年3月31日号「ベネズエラ危機の真実 デフォルト回避が国民生活を圧迫」(松浦健太郎著)、JETRO日本貿易振興機構)サイトを参考にさせて頂きました。

 

 原油価格の下落により、ベネズエラにおける外貨収入の激減が予想されます。輸入時の決済に苦労します。ベネズエラ政府は独自の外貨管理制度により、外貨流出の防衛に取り組んでいます。通常1つの為替レートを採用しますが、ベネズエラ政府は3つの為替レートを採用しています。1つ目は、基礎食料品やトイレットペーパーなどの生活必需品を輸入する場合、ベネズエラの輸入業者は「1ドル=6.3ボリバル」レートで、中央銀行からドルをもらう方法です。2つ目は、自動車部品や医療機器部品を輸入する場合、「1ドル=約12ボリバル」レートで交換される方法です。3つ目は、贅沢品等を輸入する場合、「1ドル=約185ボリバル」レートで交換される方法です。実際の通貨価値を表すのに最適な仕組みは、変動相場制です。通貨ボリバルを変動相場制で見た場合、「1ドル=約185ボリバル」のレートが近いです。もし変動相場制を採っていれば、国民は1ドル分のトイレットペーパーを約185ボリバルで購入しなければなりません。しかしベネズエラ政府が人為的に「ボリバル高レート」を採っている為、国民は6.3ボリバルという格安な価格で購入できています。ボリバル高レートの設定は、外貨流出の要因になりますが、国民の不満を小さくするので政治的安定要因として働きます。逆に、外貨流出阻止の役割を果たしているのは、ボリバル安レートの「1ドル=約185ボリバル」です。ベネズエラ国内では、生活必需品と贅沢品の価格差が著しく大きくなっています。