居酒屋の価値

 日経平均は2万円前後に至り、株価の勢いが増す日本経済ですが、相変わらずサラリーマンの所得事情は厳しいのが実態です。真っ先に、サラリーマンの支出削減の候補に挙げられるのが飲食代です。固定費の昼食代はもちろん、同僚との夜の付き合いで行く居酒屋代も削られます。居酒屋に行くことを「無駄な支出」と見る考えがあります。確かに、お酒を飲むだけなら、家で飲めば酔うことができ、楽しめます。

 チェーン居酒屋における1回の飲食代は、1人だいだい3000~5000円程度の出費となります。確かにお小遣いが少ない人にとっては、高額な支出です。しかし居酒屋は存在し続けています。存在理由があるのです。居酒屋に人が行く理由として、「参加者の負担の平等性」があります。同僚の誰かの家で飲むとしたら、招く側の同僚のみが、一方的に負担を背負うことになります。招かれる側も、負担を掛けることに、申し訳ない気持ちになります。ところが居酒屋の場合、参加者全員が「招かれる側」になります。参加者全員が良い気分で、飲食できます。

 また「集団がお酒を長時間飲み騒ぐ空間」が社会に限られているという背景も大きいです。「酒酔い」を非日常行為として捉えて処置しているのが現代社会です。典型的な例として、イスラム圏における飲酒行為の禁止があります。日本でも、お花見という特別な時期を除けば、「集団がお酒を長時間飲み騒ぐ行為」が許される公的空間は少ないです。居酒屋は限りある「集団がお酒を長時間飲み騒ぐ空間」を提供しているからこそ、存在し続けることができているのです。居酒屋の価値とは、「非日常行為空間の提供」なのです。