転職の厳しい実態

 リクナビNEXTマイナビ転職、エン転職などのインターネット上の転職サイトの存在により、求人を出している企業に簡単に応募することができます。まず登録時に、今までの仕事内容や実績、自己PRをサイト内に保存します。後は、気にいった企業を見つけ、志望動機を書き、応募のボタンをクリックすれば済みます。飲み会の店をインターネットで検索・予約する行為と大差がありません。現在、転職サイトの存在も手伝い、「気軽に転職できる時代」という雰囲気が作られています。しかし待遇の良い企業の内定を得るのは難しいです。転職を希望する求職者と経験のある働き手を求める企業が出会う場が転職(中途採用)市場です。「転職市場」に入ることは簡単、「条件の良い転職先」に入るのは難しいのが実態です。

 年齢や業界、景気の状況、そして各人の能力によって、転職事情は大いに異なってきます。ただ転職市場には、根本的な仕組みがあります。まず転職市場において、優先権を持つのは、企業側です。求人というカードが出されて初めて、転職市場が動き出します。転職活動者の力は相対的に弱いです。加えて、中途採用を実施する企業には、明確で具体的な求人像が存在しています。例えば食品会社が営業職の求人を出している場合、「食品会社の営業経験5年」、「30歳未満」などの条件を設定しています。中途採用は厳選です。企業が中途採用を実施する目的は、売上に貢献できる人材の確保です。「貢献が難しい」と判断した応募者を、企業は採用しない動機を持っています。転職市場において、転職活動者が不利であることは明らかです。

 条件の良い企業に転職する為には、即戦力者であることが前提条件となります。転職市場という仕組みから帰結する明確な答えです。しかし即戦力の能力を保有せずとも、応募できる環境がある為、わずかな可能性に賭けて転職活動をする人が生み出されています。勢い、転職活動は長期化することになります。心身の疲弊、経済的な苦境に陥り、転職先の条件を下げて活動することを余儀なくされます。ブラック企業が跋扈する要因の1つに、働き場所を確保できない転職活動者の存在があります。転職活動により、選択肢の狭さを実感した転職活動者は、仕方なくブラック企業に入社することになります。ブラック企業が働き場所を確保できない転職活動者の受け皿の役割を果たしているのです。もちろんブラック企業の例は典型であり、転職活動者を対象にして人材確保する良心的な企業も多数存在しています。中小企業が主になります。中小企業は知名度の低さから、新卒者採用活動を実施しても、学生が集まらない傾向があります。中途採用に特化する中小企業は多いです。

 上昇型の転職を誰しもが望むものの、転職市場の仕組み上、限られた人しか上昇型の転職をすることができません。多くは、下降型の転職に至ってしまいます。転職をせざるをえなくなり、下降型の転職しかない場合、優先順位を決めることが重要です。下降型の転職でも、自分にとって良い企業を選ぶことが、今後の人生の質を決めます。

 一方、大学の最終学年者を対象に実施される新卒者採用活動は、中途採用とは色合いが異なります。新卒採用を実施している企業は多く、採用する人数も中途採用より多いです。採用対象となる大学の最終学年者にとって、企業への入り口が「最も開いている時期」です。新卒採用時期に内定を得なかった若年既卒者が、民間企業への就職を希望しても、入社するのは困難です。企業における職務経験がないにも関わらず、転職(中途採用)市場で就職活動をしなければならないからです。ちなみに現在は、若年既卒者を「第二新卒」と呼び、若年既卒者を民間企業に取り込もうとする動きは存在します。

 就職・転職の際、結果に大きく関与してくるのが外部要因です。採用形態(新卒or中途)、景気の状況、会社の採用方針などに大きく左右されます。自分の能力や性格だけで、思い通りにいかない領域です。自分の能力を過大評価せず、外部要因を見極め、人生を選択していくことが大切です。