神戸山口組の活発化、予断を許さない展開に

 日本最大のヤクザ組織である山口組から脱退した団体で結成された神戸山口組の動きが活発化しています。ヤクザ社会で重要視される親分子分の関係を神戸山口組側から解消した形で、山口組は分裂に至りました。親分子分の関係は垂直的特徴を持ち、子分は親分に絶対に逆らえない仕組みです。親分子分の関係は、上部団体と下部団体の関係、ヤクザ組織内における人間関係等、ヤクザ社会全てを支配している論理です。親分子分の関係の論理上、神戸山口組を他団体のヤクザ組織は承認する訳にはいきません。「親分子分の関係を否定したヤクザ組織」を認めることは、親分子分の関係自体を否定することになるからです。自身の傘下団体に示す威厳が低下します。ヤクザ社会独自の論理は、一般社会が思うより、貫徹されます。

*今回記事を作成するにあたり『六代目山口組10年史』(2015年、メディアックス)、『週刊実話』2015年11月5日号、『週刊文春』2015年10月1日号、『山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015』(溝口敦、2015年、講談社+α文庫)の情報を参考にさせて頂きました。

 しかしヤクザ社会の論理を超えて、神戸山口組を承認する、または何らかの形で認める他団体のヤクザ組織が増えています。早くも支持の動きを見せたのが、住吉会の中核2次団体・幸平一家です。東京の繁華街・歌舞伎町で突出した存在感を持ち、好戦的なヤクザ組織と知られています。大阪の西成を拠点とする酒梅組も神戸山口組を支持しました。また神戸山口組のトップとなった井上邦雄組長(山健組組長兼任)は、九州の福岡県大牟田市を拠点とする浪川睦会の浪川政浩会長と「兄弟関係」にあるとされています。ヤクザ社会において2人の人物の親密な関係を示す為に結ばれる「疑似の親戚関係」があります。そのうちの1つが兄弟関係であり、ヤクザ社会において強い拘束力を持っています。つまりヤクザ社会に生きる者にとって、兄弟関係にある者に不義理をしてはいけないのです。実際、分裂が表面化した後、浪川政浩から神戸山口組に防弾チョッキが百着単位で送られたことが明らかになっています。浪川睦会は神戸山口組支持の模様です。また10月に入り、広域テキヤ組織の極東会や沖縄のヤクザ組織・旭琉会が神戸山口組側の訪問を受け入れました。山口組にとっては、訪問の受け入れ自体許し難いことです。とはいえ、極東会と旭琉会は山口組とヤクザ社会の同盟関係を意味する「親戚関係」を結んでいません。山口組は極東会と旭琉会に強く言えない状況ではあります。神戸山口組の顧問を務める奥浦清司(奥浦組組長)は昔から旭琉会とつながりを持っており、神戸山口組の訪問を受け入れる背景が旭琉会にはありました。しかし山口組と強固な「親戚関係」を結ぶ稲川会をはじめとした他団体は、現時点で神戸山口組を承認していません。神戸山口組の承認を巡り、現在日本のヤクザ組織は二分の様相を呈しています。

 他団体が神戸山口組を認める理由として、神戸山口組が強い勢力を維持していることがあります。ヤクザ社会の独自の論理と同じく、ヤクザ社会で通用するものとして、実力主義があります。暴力や経済力を源泉とする実力が論理を時に破ってきた歴史が日本のヤクザ社会にはあります。神戸山口組を支持した他団体は、ヤクザ社会の独自の論理を無視してまで、神戸山口組の実力を買ったのです。神戸山口組の中核組織である山健組は北海道から九州まで傘下団体(3次団体)を持つ広域2次団体です。分裂前の山口組において、組員の数では最大勢力を誇っていました。他団体によっては、裏稼業において山健組傘下の組織と付き合いが濃い場合もあります。また分裂の表面化前から、根回しも相当していたと思われます。

 外交面で一定の成果をあげた神戸山口組は人事でも新しい動きを見せています。山口組において除籍・絶縁処分となった組長を登用しています。10月に入り、新たな2次団体が神戸山口組に加わりました。誠会と英組です。誠会は、2011年に山口組から会長が除籍処分となり消滅した小車誠会で幹部を務めていた安岡俊蔵をトップとする組織です。安岡俊蔵は神戸山口組の舎弟となりました。英組のトップを務めるのは、一時山口組の2次団体・英組の組長を務めていたものの2014年に絶縁処分になった藤田恭道です。英組の組長に就任した2013年、当時41歳という若さも手伝い、実話誌に大きく取り上げられた人物です。2014年に組長の藤田恭道に絶縁処分が下された後、英組は2次団体・健心会の預かりとなり、2次団体から降格します。同年、藤田恭道の下で若頭を務めていた高島伸佳が旧英組を基に朋友会を結成し、朋友会は山口組2次団体になります。よって今回、神戸山口組にて蘇った英組が旧英組の地盤組織を引き継いでいる訳ではありません。以上の神戸山口組の人事は、山口組の「除籍・絶縁処分」の無視を意味しています。当然、山口組は看過できません。

 抗争は小規模ながら各地で起きています。弘道会の本拠地である名古屋では、10月18日、弘道会と山健組の傘下組織同士の小競り合いが起きました。また抗争ではないですが、10月6日、神戸山口組への移籍を巡り、山口組傘下組織内で射殺事件が長野県飯田市で起きました。また最近除籍処分を受けた山口組2次団体の組長が拳銃自殺をしました。自殺原因は不明ですが、今回の分裂劇が何かしらの影響を及ぼしていたはずです。山口組と神戸山口組の間に、不穏な空気が流れており、予断を許さない展開になっています。