山口組分裂騒動を巡る他団体の動向

 8月末に起きた山口組分裂騒動後、山口組とその「親戚関係」にある他団体が結ぶ関係に変化が生じています。脱退した神戸山口組を支持、また好意を持つ団体が出てきているのです。分裂騒動前に、山口組が同盟関係を結んでいたヤクザ組織は11団体(都道府県公安委員会による指定暴力団に限ります)でした。ヤクザ組織は疑似家族制度をとっていることもあり、他団体を「親戚」と見なす形で、同盟関係を結びます。分裂騒動前に山口組と「親戚関係」にあった団体は以下の通りです。()内は本部所在地です。稲川会(東京都港区)、松葉会(東京都台東区)、双愛会(千葉県市原市)、会津小鉄会(京都市)、酒梅組(大阪市西成区)、親和会(高松市)、浅野組(岡山県笠岡市)、侠道会(尾道市)、共政会(広島市)、合田一家下関市)、福博会(福岡市)。日本の指定暴力団は21団体あり、山口組と「親戚関係」を結んでいない指定暴力団は9団体あります。しかし「親戚関係」の非締結は、敵対関係を意味している訳ではありません。親戚関係の有無に関わらず、日本のヤクザ組織は他団体と交流しています。山口組も親戚関係のないヤクザ組織の弔事には幹部を送っています。山口組と「親戚関係」を結んでいない9団体は以下の通りです。()内は本部所在地です。住吉会(東京都港区)、極東会(東京都豊島区)、東組(大阪市西成区)、工藤会北九州市)、太州会(福岡県田川市)、道仁会(久留米市)、浪川睦会(福岡県大牟田市)、小桜一家鹿児島市)、旭琉会(那覇市)。

*今回記事を作成するにあたり『実話時代』2015年7月号、『日刊ゲンダイ』2015年11月3日号(2日発行)の情報を参考にさせて頂きました。

 山口組が他団体と「親戚関係」を結ぶ際にとっている方法は、主に2つあります。1つは義兄弟盃を交わす方法です。山口組と他団体の重要幹部同士が盃の交わしにより義兄弟になります。義兄弟の結び付きを、両団体の関係にまで発展させて、両団体が「親戚関係」になる仕組みです。山口組と稲川会の場合、2006年に山口組2次団体・弘道会若頭・竹内照明と稲川会2次団体・山川一家若頭・内堀和也の五分の義兄弟盃を交わしています。2人とも2次団体のナンバー2という立場でしたが、弘道会と山川一家はともに1次団体トップの出身母体です。トップを輩出した両団体の優位性を基に組まれた義兄弟盃でした。当然、他の2次団体の反発は生みます。ちなみに2006年時点で山口組と稲川会は初めて「親戚関係」になったのではありません。1972年から両団体は「親戚関係」を結んでおり、2006年の義兄弟盃は「親戚関係の更新」の意味合いが強いです。山口組は親和会とも義兄弟盃による「親戚関係」を結んでいます。侠道会とも結んでしましたが、山口組側の結んだ人物が現在神戸山口組の若頭・寺岡修だった為、この関係については微妙になっています。また松葉会とは組織間同士の親戚縁組をして、「親戚関係」を結んでいます。もう1つは後見人を務める方法です。山口組トップの司忍やナンバー2の髙山清司が他団体トップの後見人を務めることで、両団体を「親戚関係」と見なす方法です。後見人という意味から、山口組と後見される団体との関係が対等的でないことが窺えます。司忍が後見するのは双愛会、侠道会、共政会です。一方、髙山清司が後見するのは会津小鉄会、酒梅組(現在は後見を断っています)、浅野組、合田一家、福博会です。

 山口組と「親戚関係」にある団体で、神戸山口組を正式に支持したのが酒梅組です。また酒梅組は山口組の後見を断りました。近いうちに山口組との「親戚関係」は解消、両団体が緊張状態に陥ることは必至です。『日刊ゲンダイ』2015年11月3日号(2日発行)の溝口敦氏の記事によれば、侠道会は神戸山口組寄りと見られており、浅野組や共政会も神戸山口組側に近いとのことです。一方、稲川会や松葉会、会津小鉄会等は山口組支持を強く打ち出しています。

 山口組と「親戚関係」にない団体で、神戸山口組に協力的なのが浪川睦会、住吉会の幸平一家、旭琉会です。工藤会、道仁会、太州会、熊本会(非指定団体)の親睦組織「四社会」は、山口組と神戸山口組の両方とも交流しないことを決めました。テキヤ組織の極東会、鹿児島県内のみで活動する小桜一家、一本独鈷の色が強い東組の3団体は、組織風土から推測するに、中立・非干渉の立場を貫くと思われます。住吉会は中核2次団体の1つである幸平一家が神戸山口組に近い位置にいます。しかし幸平一家を除く住吉会勢力山口組を支持しています。山口組の2次団体・國粹会や落合金町連合からの「借りジマ」が大きく影響を及ぼしているからです。

 山口組にとって外交面において不利な風が吹いています。逆に、神戸山口組にとって、有利な風が吹いています。しかしこの構図も、今後様々に加わる要因によって、変化していきます。