稲川会の破門騒動

 事件、芸能、アウトロー系の濃い情報を発信するサイト「東京BREAKING NEWS」の 2016年1月13日に掲載された記事で、広域ヤクザ組織の稲川会が2つの傘下団体のトップを破門処分にしたことが明らかになりました。稲川会は、五代目会長・清田次郎体制が開始した2010年4月時点で、66の2次団体を抱えていた大組織です。大組織で起きた破門処分ゆえに、ヤクザ業界に大きな衝撃が走っています。ヤクザ業界で呼ばれる「破門」とは、所属組織(稲川会)からの追放処分を意味します。今回破門処分が下されたのは、紘城一家の戸上光雄総長、箱屋一家中村豪総長の2人です。紘城一家は神奈川県小田原市を拠点に、箱屋一家は千葉県松戸市を拠点にする稲川会の2次団体です。紘城一家、箱屋一家の2組織自体も破門処分を受けたトップに従い、稲川会から脱退することになります。

*今回記事を作成するにあたり『実話時代』2014年8月、2015年2・8月号、『山口組の100年 完全データBOOK』(2014年、メディアックス)の情報を参考にさせて頂きました。

 

 しかし紘城一家、箱屋一家の各傘下団体の中で、稲川会に残留を希望する組織があるかもしれません。残留希望の傘下団体の数が多ければ、トップに引退を迫るクーデターを隠密裏に画策する動きも出てきます。当然、稲川会総本部は紘城一家、箱屋一家の各傘下団体に揺さぶりをかけてくるはずです。ヤクザ組織において破門処分より、重い処分が、絶縁処分です。2105年8月末に起きた山口組分裂騒動では、脱退側の山健組組長井上邦雄、宅見組組長入江禎などに、山口組は絶縁処分を下しています。絶縁処分は、組織からの「永久」追放を意味しています。つまり絶縁処分が下された人物は、二度と組織に戻ることが許されません。一方、絶縁より軽い処分の破門は、場合によっては組織への復帰も慣例的に認められている処分です。稲川会総本部から破門処分にされた戸上光雄と中村豪が、稲川会に復帰する展開は2人の立場上考えにくいです。稲川会総本部が破門処分を選択した裏には、紘城一家、箱屋一家の「組織自体の復帰」は歓迎するというメッセージが隠れているはずです。深読みすれば、トップを引退させれば紘城一家と箱屋一家の復帰は認めるというメッセージです。

 

 紘城一家はトップを務める戸上光雄が1998年に設立した組織です。現在の稲川会五代目会長・清田次郎体制下で、戸上光雄は稲川会の組織委員長と神奈川県西ブロック統括長という要職を務めていました。組織委員長は、稲川会の最高幹部級に位置するポジションです。つまり今回の破門処分は、最高幹部を破門するという稲川会にとって大きな出来事なのです。箱屋一家は、稲川会専務理事を務めた趙春樹の出身母体です。趙春樹は専務理事と共に、箱屋一家総長も務めていました。1972年、稲川会と山口組の間で、親戚関係が結ばれ、両団体は同盟関係になります。稲川会理事長の石井唯博(隆匡)と山口組若頭の山本健一の両団体のナンバー2が兄弟盃を交わしたのに加えて、稲川会の趙春樹と山口組の益田佳於(横浜に拠点を持つ益田組組長)も同時に兄弟盃を交わしました。山口組との兄弟盃の一員に選ばれたことは、趙春樹が稲川会で重要人物であったことを物語っています。

 

 破門の原因は現在のところ不明です。しかし近年、稲川会は脱退した組織と抗争を起こしています。2011年、山梨県内のヤクザ組織で最大勢力を誇っていた山梨一家(稲川会の2次団体)の佐野照明総長(佐野照明は三代目でした)が稲川会を脱退します。その後、佐野照明は独立団体・山梨俠友会を興します。稲川会は当然、佐野照明を絶縁処分とします。加えて、佐野照明がトップを務めていた山梨一家を存続させ、小林山水を山梨一家の新たな三代目総長に就任させます。小林山水を四代目ではなく、佐野照明の「三代目」を名乗らせたことから、「山梨一家三代目総長佐野照明」の存在を抹殺する意図が透けて見えます。つまり稲川会が山梨俠友会の存在を絶対認めないという証です。稲川会・山梨一家と山梨俠友会の間で抗争が展開されていきます。2012年11月、山梨俠友会の幹部が甲府市内の河川敷で銃撃される事件が起きます。その後、互いの組事務所が発砲される展開に事態は至ります。2013年12月6日までに、抗争を巡り計34件の発砲事件が起きました。そして2013年12月6日、甲府市中央自動車道甲府インターチェンジで佐野照明会長を含む山梨俠友会幹部達が東京に向かい自動車に乗っていたところ、前を走っていた自動車が横向きに急停車して、飛び出してきた数人の男から銃撃される事件が起きました。乗っていた佐野照明会長らは重傷を負いました。2013年、山梨一家の方は、保阪貫作が山梨一家四代目総長に就任しました。現在も、稲川会・山梨一家と山梨俠友会との対立関係は継続しています。今回破門された紘城一家、箱屋一家の今後の動きに対して、山梨俠友会が絡んでくるのかも注目される点です。