金融機関の取引現場では、マイナス金利が存在する

 日銀が民間銀行に科すマイナス金利のニュースが注目を浴びました。一方、金融機関の取引現場においては、すでにマイナス金利を伴う取引が行われています。日本企業が海外企業に投資する場合、日本の民間銀行(邦銀)に投資に必要な「多額のドル」の調達を依頼します。依頼された邦銀は、ドルを持つ海外投資家と、「円・ドル貸し合い」の取引(為替フォワード取引)を行います。邦銀は円を、海外投資家はドルを、互いに貸し合うのです。当然、お金を借りる行為なので、互いに金利を相手に支払う必要があります。

*今回記事を作成するにあたり『週刊エコノミスト』2016年2月16日号「日銀のマイナス金利より怖い すでに始まっているマイナス金利」(徳勝礼子著)の情報を参考にさせて頂きました。

 「円を借りる」立場の海外投資家は、日本の市中金利を基準にして、邦銀に円金利を払います。「ドルを借りる」立場の邦銀は、アメリカの市中金利を基準にして、海外投資家にドル金利を払います。加えて、この取引は為替交換でもある為、通貨の流通量の多寡も取引に影響を及ぼしてきます。現在、米連邦準備制度理事会FRB)が利上げ姿勢に入っている一方、日銀は金融緩和を継続しています。ドルの流通量は少なく、円の流通量は多くなっています。つまり円安ドル高の傾向にあります。言い換えると、「円よりドルに希少価値がある」という状況です。円安ドル高の状況下、「ドルを借りる」立場の邦銀は海外投資家からドルを簡単に借りることができません。よって邦銀はアメリカの市中金利よりも割高な金利を海外投資家に支払うことで、ドルを調達しています。

 例えば、1000万ドルの「円・ドル貸し合い」の取引を、邦銀と海外投資家が行ったとします(1ドル=120円の為替と想定)。邦銀が海外投資家に支払うドル金利は0.2%です。つまり返済時に、1002万ドルを支払います。一方海外投資家が邦銀に支払う円金利は0.1%です。つまり返済時、12億120万円を支払います。邦銀にとってすれば、1002万ドル(12億240万円)支払い、12億120万円を受け取った計算となります。つまり120万円の損失が出る取引です。逆に海外投資家にとってすれば、12億120万円(1001万ドル)支払い、1002万ドル受け取る計算となります。1万ドルの利益が出る取引です。邦銀が取引に伴い受け取る金利が「マイナス」状態になっています。一方海外投資家にとって、この取引は、手数料をもらいながら円資金を一時保有するだけで済むお得な話なのです。つまり邦銀と海外投資家の相対取引の現場では、すでにマイナス金利を伴うやりとりが行われているのです。