新団体発足の動きがとまっている?

 アンダーグラウンド系ニュースサイトR-ZONEに「菱のカーテンの向こう側52 関東に「親・神戸山口組」系の新たな団体が誕生する!?」(4月24日)という記事が配信されてから、1週間が経ちました。記事内容をまとめると、近々関東でヤクザ組織の新団体が発足され、その団体は神戸山口組と親しい立ち位置で活動していくという内容でした。また4月25日同サイトにて、工藤明男コラム「元関東連合幹部・工藤明男の時事評論「井上邦雄組長と後藤忠政氏が某所で密会の噂」」という記事が配信されました。後藤忠政とは、山口組有力2次団体・後藤組のトップであり、山口組で若頭補佐などを務めた人物です。2008年10月、後藤忠政山口組から除籍処分を受け、ヤクザ社会から引退しました。その後、後藤忠政は半生を描いた書籍『憚りながら』(宝島社)を出し、話題になりました。潤沢な資産を持ち、現在はカンボジアに居住しています。しかし突如、今年の3月末、後藤忠正は日本に帰国します。医療的措置を受けるのが目的ですが、水面下では現在の山口組分裂抗争の当時者と接触し、関与していくという噂もされていました。事業家で裏社会事情にも明るい工藤明男氏は4月24日の記事より踏み込んで、記事内で、後藤忠正が神戸山口組の井上邦雄組長と密談した結果、旧後藤組の後継組織が中心となって新団体が立ち上げられるという内容を述べていました。

*今回記事を作成するにあたり『実話時代』2015年2月号の情報を参考にさせて頂きました。

 

 旧後藤組の後継組織とは、現在山口組の2次団体である良知組と藤友会のことです。良知組は静岡県榛原郡吉田町、藤友会は静岡県富士市に本部事務所を持っています。『実話時代』2015年2月号「二〇一五年度版指定21団体最新勢力マップ」によれば、良知組と藤友会の傘下団体は主に関東地方や東北地方で活動しています。関西以西では、活動している実績がなさそうです。良知組と藤友会は東日本に一定の基盤を持っていることが分かります。一方、弘道会や極心連合会のように、北海道や青森から鹿児島までに傘下団体を持つ全国規模の団体ではないことも分かります。良知組と藤友会の2団体だけ抜けて、新団体を作っても、規模的に心もとない印象を受けます。他団体の巻き込みが必要となります。一番の候補として上がってくるのが、山口組分裂当初から、神戸山口組に親和的な態度をとる住吉会の2次団体・幸平一家です。住吉会全体としては、山口組側を支援しており、幸平一家の動きは住吉会と対立しています。ツイッター上では、噂の域を出ませんが、後藤忠政と幸平一家の加藤英幸総長が会談したという話が流れていました。新団体が神戸山口組に加わらないで、独立団体として活動していく狙いとしては、関東のヤクザ組織だけでまとまりたいという考えがあると推測されます。幸平一家としても、「山口組色」が濃厚な神戸山口組よりは、新団体の方が行きやすいはずです。

 

 加えて、現在「大きな傘」を欲するヤクザ組織が関東にはいくつかあります。今年1月稲川会から脱退した紘城一家と箱屋一家、2014年松葉会から脱退した勢力で発足した松葉会関根組などです。紘城一家と箱屋一家は稲川会と、松葉会関根組は松葉会と対立関係にあります。山口組は稲川会と松葉会とは同盟関係を結んでいます。その関係上、山口組分裂抗争においては、紘城一家、箱屋一家、松葉会関根組の3団体はおのずと「親・神戸山口組」の態度をとってしまうことになります。神戸山口組と親しい関係を結ぶとされる新団体には、加わりやすいです。

 

 しかしこの1週間、新団体の動きが表面化されることはありませんでした。R-ZONEやツイッター上でも、新団体に関する続報はありません。脱退及び新団体の発足といった隠密裏な活動は、成就する速さが求められます。計画が露見して、実行に至るまで時間がかかると、切り崩しにあいます。また時間が経てば、元組織を裏切ることに関して、不安を強くするメンバーも増えてきます。結果、新団体の発足に至ることができません。山口組分裂の場合、計画が露見してから間もなく、神戸山口組は実質的な活動をしていました。神戸山口組側は成就するスピードが早かったです。一方、今回の新団体の話の場合、異様に時間がかかっている印象があります。考えられる事として、山口組側からの切り崩しがあります。後藤忠政引退の2008年から時間を経たこによる後藤忠政の影響力の低下もあるのかもしれません。新団体が発足することになれば、山口組にとって大きな痛手で、神戸山口組にとっては大きな味方が関東にできるので有利に働きます。一方、新団体の話が立ち消えになれば、山口組にとって、現状を死守したに過ぎず、勢力に変化はありません。しかし新団体発足を潰したという行為自体は、山口組側にとって、狡猾な政治力を示したことになります。山口組にとっては大きな「戦功」となります。山口組の今後の動きに弾みがつきます。新団体話の着地点は、今後の分裂抗争の行方を占っています。