経済記事に出てくる根抵当権とは?

 裏社会が絡む経済事件において、動く金額が大きい不動産取引は必ず登場します。経済事件を描いた記事を読むと、不動産の専門的用語につまずき、内容の理解が妨げられることがあります。例えば、根抵当権という言葉です。似た言葉の「抵当権」という言葉はよく聞かれます。抵当権とは、借金が返済されなかった場合、借金をした側が差し出した担保の不動産等を、競売して処理できる権利のことです。金を貸した側つまり債権者が持つ権利です。抵当権者とは、債権者のことを指します。根抵当権とは、抵当権の一種です。

*今回記事を作成するにあたり株式会社センチュリー21・ジャパンのサイト(http://www.century21.jp/)における「お役立ち情報」の「不動産用語集」、『日本経済「裏」と「表」の金脈地図』(伊藤博敏、1992年、KKベストブック)の情報を参考にさせて頂きました。

 『日本経済「裏」と「表」の金脈地図』(伊藤博敏、1992年、KKベストブック)において「JR渋谷駅の南口から徒歩五分の場所に、住宅信販は九〇年、高級会員制スポーツクラブの「ネプシス」をオープンさせた。ここの約五〇〇坪の土地と建物に住友銀行は合計で一八〇億円の根抵当権を設定している」(97~98頁)という文章を参考に、考えていきたいです。登場する主体は、住宅信販住友銀行の2法人です。住宅信販は高級会員制クラブの事業主であり、住友銀行は金を貸す業務を行う金融機関です。文脈から、住宅信販住友銀行が金を貸したことが考えられます。問題は、ネプシスが立つ土地と建物に住友銀行根抵当権180億円を設定したことです。抵当権という言葉を頼りに考えると、「住友銀行が、ネプシスの土地と建物を担保として受け取り、住宅信販に180億円を貸し出した」という意味に受け取ってしまいます。確かに、住友銀行は担保を取り住宅信販に金を貸し出しました。しかし貸し出した金額は180億円とは限らないのです。

 センチュリー21のサイトによれば、根抵当権とは「一定範囲内の不特定(増減する)の債権を、極度額を上限として担保する抵当権のこと(民法398条の2以下)」とのことです。つまり根抵当権は、特定ではない債権つまり「複数の債権」の抵当権のことです。また複数の債権において、貸し出す金額の上限(極度額)が設定されていることも、根抵当権の特徴です。先の例の「180億円の根抵当権が設定」されると、住宅信販住友銀行から「合計180億円以内」の借金を何回もすることができます。例えば、住宅信販住友銀行からある年に50億円借りて、その50億円を返さないまま翌年に100億円を住友銀行から借りることができます。ただし借金残高が180億円を超えると、住宅信販住友銀行から新たに借金することはできません。

普通の抵当権は、特定の債権に関しての担保を処理できる権利です。個人が契約する住宅ローンの場合、金融機関と個人の1回きりの契約になり、債権者の金融機関が持つのは抵当権となります。個人が金融機関にローンの借金を無事に返済し終わると、金融機関が持つ抵当権は抹消されます。しかし金融機関と企業の取引の場合、賃借取引は複数回に及びます。1回1回抵当権を設定及び抹消するのは、非効率です。一方、根抵当権により賃借する形をとれば、迅速に貸し出しが実行され、企業の経済活動が促進されます。

 根抵当権の金額から、担保物件の価値、また企業の収益力を読み解くことができます。また先の例において「住友銀行根抵当権を設定した」となっていますが、これは誤りです。「根抵当権を設定する」役割は債務者が果たします。根抵当権に関する取引において、債権者は「根抵当権者」であり、債務者は「根抵当権設定者」となります。先の例を正しくすると、「住宅信販根抵当権を設定した」となります。