覚せい剤ビジネス

 6月24日、俳優の高知東生覚醒剤取締法と大麻取締法違反の疑いで逮捕され、芸能界の薬物問題が活気づいています。逮捕された場所は横浜市南区のラブホテルで、元レースクイーンの女性(33)と一緒にいました。女性も同じ容疑で逮捕されました。2人は覚せい剤によるセックスに勤しんでいた訳です。覚せい剤の主な用途に、性行為の快楽を促進させることがあります。とはいえ覚せい剤には、催淫性はなく、文字通り興奮性が主な作用です(*1)。男性は射精に至るまでの時間が長引き、興奮性によりピストン運動を何回も行うことができます(*2)。覚せい剤には、勃起する能力を助ける作用はないのです。一方、女性は皮膚感覚が過敏になり、通常時より増幅された快感を得ることができます(*3)。

 覚せい剤の1回使用量は、0.02~0.03gです(*4)。使用者と売人の売買において、「パケ」と呼ばれる小さな包みがやり取りされます。1パケの量は0.25g だったり(*5)、0.2gだったり (*6)、0.3g(*7)というような量の辺りになっています。つまり1パケ購入すると、「10回分」使用できるようになっています。1パケの価格は約1万円です(*8)。覚せい剤の販売においても、「10回分」「1万円」という販売形態に工夫をしていることが窺えます。しかし覚せい剤は使用するにつれ、耐性がつき、薬効が低下します(*9)。よって使用者は、1回時の使用量や使用回数の増加で、薬効を維持させていくことになります(*10)。自ずと覚せい剤の購入が増えます。覚せい剤ビジネスが流行る背景には、使用者を「中毒者」にさせる覚せい剤の力があるのです。

 また売人は医療用注射器も販売します。覚せい剤を体内に取り込むのに、注射器を使うからです。1回1本使う為、使用者は大量の注射器を必要とします。一般人が表社会で「大量の医療用注射器」を購入することは不可能に近い為、注射器も裏社会の売人に調達してもらうことになります。医療現場で販売されるより、当然高く買わされることになります。1箱280本4万円で販売するケース(*11)や1本1000~2000円で販売するケースがあります(*12)。前者の場合、1本143円となります。他方、覚せい剤を火であぶり、気化させて吸引する方法もあります(*13)。注射痕が残りません。「アブリ」と呼ばれています。

 以上述べてきましたが、言われているように使用者には悲劇しか待っていません。肉体、精神がボロボロになるのは当然、2次的被害も甚大です。仕事の人間関係及び友人関係は消滅、そして家族関係も消滅しかねません。覚せい剤は巧妙に近寄ってきます。「覚せい剤」とは名乗らずに、使用を勧められることもあるでしょう。「危なくない薬のアブリだよ」と勧められても、アブリすること自体がまず危険な事態につながることだと認識して、避けなければなりません。また男が女性に覚せい剤を仕込む為に、コンドームに覚せい剤の水溶液を付けた上でセックスし、膣粘膜から覚せい剤を摂取させる方法があります(*14)。覚せい剤は絶対にいけません。

<引用・参考文献>

*1 『日刊ゲンダイ』2016年7月5日号(4日発行)「溝口敦の斬り込み時評<263>」

*2 同上

*3 同上

*4 『日刊ゲンダイ』2016年2月23日号(22日発行)「サラリーマンも溺れる覚せい剤①」

*5 『日刊ゲンダイ』2014年10月21日号(20日発行)「溝口敦の斬り込み時評<187>」

*6 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p205

*7 『日刊ゲンダイ』2016年2月16日号(15日発行)「溝口敦の斬り込み時評<245>」

*8 『日刊ゲンダイ』2014年10月21日号(20日発行)「溝口敦の斬り込み時評<187>」

*9 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p223

*10 同上

*11 『日刊ゲンダイ』2016年2月16日号(15日発行)「溝口敦の斬り込み時評<245>」

*12 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p207

*13 同上, p228

*14 『日刊ゲンダイ』2016年7月5日号(4日発行)「溝口敦の斬り込み時評<263>」