約5カ月後に明らかになった6億円相当の金塊窃盗事件

 今年7月福岡県JR博多駅付近で6億円相当の金塊窃盗事件が起きていたことが、12月14日、地元紙西日本新聞の報道で明らかになりました(*1)。事件当日、被害者らは前日に購入した金塊(約160キロ)を転売するために、博多駅付近の貴金属店に車で向かっていました(*1)。車を降りて複数のアタッシュケースに入った金塊を貴金属店に徒歩で持ち運ぼうとする途中、被害者らは警官らしき服装をした数人の男に制止されます(*1)。警官と信じてしまった被害者らはアタッシュケースを数人の男らに渡しました(*1)。警官らしき服装をした数人の男は、被害者らの隙を見て、アタッシュケースを車で持ち逃げしました(*1)。

 被害金額の大きさから、取り扱いの大きい事件になることは想像に難くありません。しかし発生から約5か月が経過した時点で、ようやく事件は公になりました。「空白期間」の約5か月に関して、疑問が上がることは必至です。裏には、様々な事情があると推測されます。「前日に6億円相当の金塊を購入して転売する」という行動も、一般人の行動からかけ離れています。考えられる話の1つとして、被害者らが事件発生直後に、警察に事件を通報しなかったことです。つまり被害者らが当初、事件を公にしない考えを持っていたということです。結果的に、被害者らでは金塊を取り戻せずに、遅れて警察に相談した又は警察に事件の存在を知られたことから、約5か月の空白期間が生まれたという説が考えられます。その説に従うと、被害者らは裏稼業に従事していた人物であると推測されます。

 近年、日本の裏社会では金の密輸ビジネスが流行しています(*2)。金は世界中で認められている極めて有力な動産です。よって世界中で、金の価格は同一です(*2)。しかし付加価値税(VAT)や消費税の有無によって、価格が変わってきます(*2)。密輸ビジネスはその差額を狙います。金に課税している国は、日本、韓国、インドだけであり、その他の国は基本的に非課税です(*2)。つまり香港で100万円分の金を購入して飛行機に乗り込み、日本の税関に申告せずにまた持ち込みが発覚せずに、日本の貴金属店に持ち込めた場合、密輸者は金を消費税込みの108万円で転売することができます(*2)。8万円の儲けとなります。「消費税8%」が儲けの核であるため、持ち込む金の価格が大きくなればなるほど、儲けは大きくなる仕組みです。特に香港は日本から近く交通費が安く済むため、金の調達先としてよく利用されています(*2)。しかし金を「旅客の荷物」として運ぶため、1回の密輸量には限りがあります。金の重さを考えると、1回1人数キロの密輸量が相場です。貴金属の現物販売業務を行っている第一商品株式会社の12月16日15時5分時点の金買取価格(1kg)は462万8千円となっています(*3)。仮に3キロ密輸して(450万円/キロとして)、日本の貴金属店で、消費税抜価格1350万円(消費税あり価格1458万円)で転売できます。つまり108万円の儲けとなります。未申告で税関に発覚した場合、「無許可輸入」となり、罰せられます(*2)。

 今回の事件に戻ると、窃盗されたのは約160キロの金塊でした。旅客を装う密輸で一度に調達すると、1人4キロの持ち運びとすると約40人の人数が要ります。裏稼業で、それだけの人数が集まるのか、疑問です。また約160キロの金塊の価格が6億円相当ということから、儲けは約4800円となります。人数をかけた割には、儲けの額が低い印象を受けます。被害者らが「前日に」購入したのではなく、コツコツとためていたのを、一度に転売しようとした可能性もあります。しかし窃盗されたように、窃盗リスクを重視する裏稼業の観点から密輸直後に転売するのが一般的です。密輸ビジネスで得た金塊とは考えにくいです。

 ともかく警察当局の捜査の進展が期待されます。

<引用・参考文献>

*1 『日刊ゲンダイ』2016年12月16日号(15日発行),p4

*2 『日刊ゲンダイ』2015年1月27日号(26日発行)「溝口敦の斬り込み時評<197>」

*3 第一商品株式会社サイト