オタフクソースの販売戦略

 お好み焼きソース販売大手のオタフクソースは、自社商品普及の為に、様々な工夫を図っています。オタフクソースは、お好み焼き店開業を目指す個人向けに、お好み焼き研修センターを1987年から設立しています(*1)。現在、仙台、東京、大阪、広島、福岡の5都市のお好み焼き研修センターで、研修が実施されています(*2)。スタンダードコース(5日間:広島校以外の4校)では広島お好み焼きと関西お好み焼きの研修を、広島エキスパートコース(5日間:広島校のみ)では広島お好み焼きの研修を、開業希望者は受けることができます(*2)。各コースとも、1人3万円の受講料がかかります(*2)。お好み焼き作りのノウハウに加えて、お好み焼き店経営のノウハウも学べる場になっています(*2)。

 

 多くの受講者は開業後、研修で生まれたオタフクソースとのつながりから、オタフクソースからお好み焼きソースを仕入れることになります。オタフクソースは「お好み焼き研修センターの設立」→「お好み焼き店の増加」→「お好み焼きソースの消費量増加」という流れを作ることで、自社のお好み焼きソースの売上増を図っているのです。また学園祭に関するイベントも実施しています。焼きそばを出す模擬店に対して、麺やソース等の無料提供、鉄板やヘラなどの備品貸し出し、実技指導などを、オタフクソースは2016年に40校限定に実施しています(*2)。模擬店を出す学生が、その後お好み焼き店を開業する訳ではないので、直接お好み焼きソースの売上増につながりにくい企画です。しかしオタフクソースのブランドイメージ向上には寄与する企画です。

 

 オタフクソース広島市に本社を構えています。1952年、オタフクソースは業務用お好み焼きソースの製造を始めます(*1)。1952年以前、お好み焼きには主にウスターソースがかけられていました(*1)。トロミのないウスターソースは、お好み焼きに常時付くことなく、鉄板に流れ落ちていました(*1)。1952年オタフクソースが製造したお好み焼きソースはトロミ付きで、現在のお好み焼きソースの初代ともいえる存在でした(*1)。当時オタフクソースが営業対象としていたのは、地元の広島お好み焼き店でした。しかしその後、オタフクソースは「広島お好み焼きに特化したソース」だけを提供することに終わらず、関西お好み焼きにも手を伸ばしました。広島お好み焼きは重ね焼きの為、家庭で作るには手間が掛かります。一方、関西お好み焼きは混ぜ焼きで、家庭でも容易に作ることができます。一般消費者のことを考えれば、関西お好み焼きへのアプローチは欠かせないのです。1990年代後半からオタフクソースは、関西お好み焼きのお好み焼きセットを消費者向けに販売しており、関西お好み焼きの普及にもつとめてきました(*3)。オタフクソースはお好み焼き全体の需要の底上げに貢献したといえます。オタフクソースの販売戦略の巧みさが窺えます。

 

<引用・参考文献>

*1 『広島学』(岩中祥史、2011年、新潮文庫), p180-182

*2 オタフクソース株式会社サイト

*3 『めしばな刑事 タチバナ 25』(原作:坂戸佐兵衛、作画:旅井とり、2017年、徳間書店), p174-176